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家づくりコラム

設計監理とは、そして、設計・施工分離の意義とは

前書き
 「設計料サービス」といっているハウスメーカーを時々目にします。
建築家(一級建築士や二級建築士で設計監理業務に携わる人たち)の業務に馴染みのない建築主 には受けがいいようです。
家を建てるとき建築家の役割はそんなに小さいのでしょうか?
トラブルのない満足のゆく家造りに必要なものとは何かを含めて設計料を考えてみましょう。


家づくりは平面図と立面図があればできるというものではありません。
「サービス」や「無料」があれば安いのではなく、「必要なところにだけ必要な支出を」が本当に安い家づくりです。
本来必要な建築家の仕事量は一体どのくらいでしょうか?


設計監理とは建築家が行う、家づくりに必要な一連の作業を指します。
その内訳は、敷地・建物の情報収集、法律上の検討、基本プラン検討、詳細な検討および設計図作成、構造計算、関係官庁への申請業務、施工図の作成、施工業者見積の調整、施工業者との打ち合わせ、各工程の検査、完成引渡しの立会いおよび監理業務完了手続き等です。
建築家=建築士(設計事務所)は戸建て住宅や集合住宅、各種施設の設計監理をする他、飲食店 などを設計監理することもあります。
一般的な建築家の業務を大別すると基本設計業務、実施設計業務、施工監理業務になります。その中で一番大切なのが、建築主=お客様に対する事前説明=インフォームドコンセントです。建築主は原則的に素人ですので、解らない事がたくさん有るはずです。そこを、解り易く丁寧に 説明して、納得の上での選択的決定を促すことが私の一番労力を費やしている仕事です。

①現場の監理者は?
 建築主が打ち合わせをするのは担当営業マンや工務店の社長の場合が多いです。ところが現場の工程を見守るのは馴染みのあるこの人たちではありません。
では誰が現場を管理するのでしょう。
建築家の業務のうちの三つ目「施工監理業務」とは、工事が設計図書通りに施工されているか を監理する業務です(現場監督とは違います)。
建築現場には工事看板が掲げてあり、施工監理者として建築士の名前が書いてあることが多いです。ハウスメ-カ-や工務店は通常、設計業務と施工業務を一括して行っています。


 設計と施工は密接な関係なので同一業者がこれらを行えば、業務の遂行上一定のメリットがあるからです。そして、実力・見識・人材の全てを具えている工務店であればこの方法も非常に良い方法だと思います。
しかし、通常の工務店や建設会社は残念ながらその全てを具えているわけでは有りません。
さらに、ハウスメーカーは設計者と監理者が違ったり、監理者がいなかったりしますし、施工は、協力工務店と言う名の下請け工務店が施工します。
これは、施工のチェックが甘くなることを意味しており、欠陥工事の温床と言われています。こんな実態はハウスメ-カ-や一般工務店の構造的な欠陥と思います。
さらに、実際には監理業務自体が有名無実になっているケ-スもあります。
正確に言えば、監理者が現場をチェックしに来るのは稀で、現場担当者や親方大工が工事の監理まで任されている場合が多く有ります。
誤解のないように前置きをしますと、大方の大工は堅実な仕事をします。
しかしそれでも運が悪い建築主は、手抜き工事や欠陥住宅の被害者になりえる事を知っておきましょう。

②設計者=建築家が監理する
 施工会社とは独立した設計事務所が設計と施工監理を行う場合は、設計者と工事会社がそれぞれ別の立場にいるので、監理体制が甘くなることがありません。
設計士=建築士は、施工会社からではなく、建築主と委託契約を結びお金を貰うわけですから基本的に建築主の立場に立ちます。(中立無私が理想ですが)
逆にいうと、もし自分の家の施工監理体制がそうなっていない場合は、建築主本人が足しげく現場をチェックしなければいけなくなります。
ただし、建築主が確認して不具合が的確に指摘できる事は少ないと思います。


 建築家は躯体や設備が設計図の通りに出来ているかを各工程で逐一確認します。
設計図と違う工事があればすぐに手直し工事をさせる立場にあります。
手直しの指示に従わなければ、建築家と建築主は契約違反を指摘して施工業者と話し合うことができます。
建築家が施工監理をする場合、施工業者としては手直しさせられないために、始めから図面どおりやった方が得だと思うようになります。
つまり手抜き工事が予防できます。
建築家は、設計や施工監理のプロですし、施工業者の法的責任も熟知しております。ですから、施工の不手際を発見したとき施工業者に毅然とした態度を取る事ができるのです。これは、よい家づくりのためには大切なポイントです。


 各ハウスメーカーは自社の商品(住宅)の見積を出します。
他社と比較されても競争できるような金額を見積もりますが、建築主はその内訳をどう評価すればいいのでしょうか? 特に、契約前の段階では明細見積りを提出してくれませんので、比較検討のしようもありません。
(ハウスメーカーであれ地元工務店であれ、明細見積もりと別途係るであろう予算明細を提出しない業者とは、どんな契約であれ結んではいけません)
共通の基準がない限り、建築主には本当に妥当な金額かどうかを判断する方法が無いのです。
大雑把な内訳の意味するものが不明である限り、単に建築価格の小さいものがベストとは限りません。
そこを平等且つ適切に数字を把握して説明できるのが建築士です。


 設計と施工を分けるともう一つメリットと言われるものが有ります。
それは、設計事務所が作成した具体的な設計図書に対して、複数の施工業者に見積もりをさせて妥当な見積りを出した工務店を選択することです。
但し、この方法が招く弊害も有ります。
現実には、建築主が安ければよいと言う判断や建築家の言うことを聞かずに、勝手な安い予算を組んでしまうことが多い事です。
また、全てを完璧に決めてからでないと競争見積りができないため、計画中=図面を描いている最中に、予算オーバーを起さないように調整することができにくいことです。
『一つの設計図をもとに競争の原理を働かせるので明確な基準で工事費を比較でき、妥当な値段で住宅を建てられる』と言うのは一面の真理ですが、住宅レベル=一億円未満の工事予算では、計画時に予算オーバーしてしまった図面に、実際の予算=見積りを合わせる事は、最初から足りない予算のために手抜き工事を奨励することになりかねません。


 私の事務所の追い求める現実的な理想は、施工組織を持つ設計事務所の利点を生かして、中西工務店のみならず他の工務店の見積書も、適正な数量と適正な価格が見積書に記載されているかどうかをチェックし、お客様にも工務店にも喜ばれる中立的な設計監理をすることです。
そのために、設計業務をほとんど全てコンピューターで行い、細かい数字まで私たちがはじき出して、工務店に見積もりを依頼するときはその数字を全て教えて見積りをしてもらいます。

③設計監理料とは?
 建築家に支払う広い意味での設計料とは設計業務と監理業務に対する報酬のことです。
設計と施工を同一業者が行うハウスメーカーなどでは、設計料はサ-ビスとうたう場合があります。その方が建築家の業務に疎い人たちには受けるからでしょう。
しかし建築家が本当の意味で現場監理をしない場合でさえも、人件費は少なからずかかります。
メーカー住宅の場合、設計料は建築工事費の3~4%程度だと言われています。
(ただし設計者が無給のボランティアであるなら別ですが‥)
そういうケースでは設計料が工事費の中のどこかの項目に名目を変えて計上されているものです。営業上のテクニックとして悪意がないとしても、そこには欺瞞があることをここまで読んだ方は見抜くことになるでしょう。
また、設計料の項目が見積書にあっても、金額が異常に小さい場合は同様です。


建築家=建築士の設計監理報酬は、以前の住宅金融公庫の小冊子には、住宅レベルの建築ですと『おおむね総工事費の8%程度』と書かれています。
確かに、良い工務店を建築主が選択していただければこれぐらいが妥当な設計監理料だと思います。私たちは、さらに良い工務店=ビルダーをご紹介しますので、その工務店を選択していただければ、施工監理の人件費が少なくてすみますので、より低い設計監理料でより良い仕事ができることをお知らせしております。
以上、長々と設計監理や設計監理料について記述しましたが、ここまで読んでいただけた方に感謝いたしますと共に、良い住宅を建てて、楽しく快適な生活をなさることを切望いたします。

㈲大匠 一級建築士事務所 中西和彦